
「子どもがSNSで悪口を書かれているのに、学校が動いてくれない。」このような悩みを抱える保護者の方は、決して少なくありません。
しかし、いじめ防止対策推進法のもと、学校にはネットいじめを含むすべてのいじめを防止・対処する法的義務があります。
学校が十分に対応しない場合でも、法的根拠にもとづく申し入れや教育委員会への相談、必要に応じた法的手続によって、対応を促せる可能性があります。
本記事では、SNSトラブルの実態、学校に求められる対応、証拠の残し方、弁護士に相談するメリットについて解説します。
1.いじめ問題は「学校外」へ。保護者が気づきにくいSNSトラブルの実態
SNSやチャットアプリを通じたいじめは、保護者や教職員の目に見えにくいところで進行します。まずは、ネットいじめがどのような形で起こり、法律上どのように扱われるのかを確認しておきましょう。
「見えないいじめ」の広がり
かつてのいじめは、教室や廊下といった物理的な空間で起きるものが中心でした。しかし今、いじめの舞台はスマートフォンの中へと移っています。
代表的なSNSトラブルとしては、次のようなものが挙げられます。
- LINEグループから特定の生徒だけを外す「グループ外し」
- クラスのグループチャットでの悪口・無視・画像拡散
- 匿名アプリを使った誹謗中傷
- SNSアカウントへの侮辱的なコメントや「晒し」
こうしたトラブルは画面の中で完結するため、保護者が異変に気づいた時点では、被害がすでに深刻化しているケースが少なくありません。
法律上の「いじめ」にあたるのか?
いじめ防止対策推進法は、「いじめ」を以下のように定義しています。
(いじめ防止対策推進法2条1項)
上記の定義からもわかるように、インターネット上での行為であっても、相手が同じ学校の生徒であり、被害を受けた生徒が心身の苦痛を感じているのであれば、法律上のいじめに該当する可能性があります。
2.なぜ学校は動かないのか?「学校トラブル」を放置させない法的アプローチ
なぜ学校はいじめ問題に腰が重いのか。背景にある理由は主に以下の3つです。
①いじめを認定すると保護者対応や調査など学校側の負担が大きくなるため、問題の表面化に慎重になることがある
②「重大事態」と判断されると、学校や設置者の対応が外部から検証される可能性がある
③ネットいじめは証拠が見えにくく、事実関係の把握や関係者対応が難しいと判断されやすい
こうした学校側の事情が、被害生徒への対応を後回しにさせています。しかしいずれも、学校側が負う法的な義務を免除する理由にはなりません。
学校が負う安全配慮義務
学校には、児童生徒が安全に学校生活を送れるよう配慮する義務があります。公立学校では国家賠償法上の責任が、私立学校では民法上の安全配慮義務違反や不法行為責任が問題となることがあります。
そのため、いじめが疑われる状況では、学校が速やかに事実関係を確認し、必要な対応をとることが求められます。学校の責任は放置・助長が認められる場合の二次的なものですが、事案によって義務違反が問題となる可能性があります。
いじめ防止対策推進法にもとづく義務
いじめ防止対策推進法は、学校・教職員が取るべき行動を法律として明文化した行政上・教育上の義務です。同法のもとでは、いじめ認知後の速やかな事実確認や設置者への報告、被害者支援、保護者への情報共有などが具体的に規定されています。
学校を動かす3つの法的アプローチ
学校の対応が不十分な場合、以下の手段を段階的に活用することが有効です。
① 教育委員会への申告
設置者である教育委員会に直接申し入れを行います。学校に調査・報告を求める権限を持つ教育委員会に働きかけることで、学校単体への申し入れより実効性が高まります。
② 重大事態としての調査要求
不登校が相当期間続く場合や、自殺を企図した場合など、いじめによって生命・心身・財産に重大な被害が生じた疑いがある場合などの「重大事態」では、いじめ防止対策推進法に基づき、学校または学校の設置者に対して調査を求めることができます。事案によっては、第三者性を備えた調査組織による調査を求めることも考えられます。
③ 損害賠償請求
学校側の対応に安全配慮義務違反などが認められる場合、公立学校であれば設置者である地方公共団体に対する国家賠償請求、私立学校であれば学校法人等に対する民事上の損害賠償請求が可能となるケースがあります。法的手段の存在を明示すること自体が、学校側の対応を促す契機となる場合もあります。
3.ネットいじめ解決の鍵は「証拠」にあり。正しいスクショとログの残し方
ネットいじめの証拠は、SNSの投稿やメッセージなど、加害者側がいつでも削除できるものがほとんどです。一度消えてしまえば加害者の特定も賠償請求も困難になるという難しさがあります。
ここでは、ネットいじめ発覚直後にすべき証拠保全の対応と、匿名投稿者を特定する法的手段を解説します。
削除される前に行動する
ネットいじめの解決において、証拠の保全は最優先事項です。投稿やメッセージは、加害者側が削除すれば二度と取り戻せません。
被害が発覚したら、URLを含む画面全体のスクリーンショットを撮り、PDF保存または紙への出力も行ってください。デジタルデータだけでは端末紛失・破損のリスクがあるためです。いじめの経緯・日時・発言内容のメモも並行して残しておくことが重要です。
投稿者を特定する「発信者情報開示請求」
匿名アカウントによる誹謗中傷であっても、発信者情報開示請求や発信者情報開示命令の手続により、投稿者の特定を目指せる場合があります。
通常は、SNS事業者にIPアドレス等の開示を求めたうえで、接続プロバイダに契約者情報の開示を求める流れになります。投稿者を特定できれば、謝罪要求や損害賠償請求を検討できます。
ただし、プロバイダが保存する通信記録は3か月程度で削除されるケースもあります。時間が経つほど特定は困難になるため、被害が発覚したら早期に弁護士へ相談することをおすすめします。
4.加害者への損害賠償と環境改善。弁護士が介入する「3つの具体的メリット」
いじめ問題について、弁護士が介入することで得られる主なメリットは、次の3点です。
① いじめ事実の立証と損害賠償請求
弁護士は証拠を法的に有効な形で整理し、加害者またはその保護者に対して、慰謝料・治療費・カウンセリング費用などを請求します。事案によっては名誉毀損・侮辱・脅迫などの刑事問題にも発展し得るため、警察への被害届提出や告訴も視野に入れた対応が可能です。
② 感情的な対立を避けた冷静な交渉
保護者同士の直接交渉は感情的な衝突や二次トラブルを招きやすく、問題解決をかえって遠ざけます。弁護士が代理人として介在することで、冷静な協議・合意形成が可能になり、当事者の精神的負担も大幅に軽減されます。
③ 学校への環境改善要求と再発防止
保護者が一人で学校に申し入れても、「検討します」と言われたまま何も変わらないケースは少なくありません。弁護士がいじめ防止対策推進法を根拠に要請することで、別室登校の実施や加害生徒との分離といった具体的な措置を学校に取らせやすくなります。また、協議内容を書面化し再発防止策を明記しておくことで、「言った言わない」を防ぎ、学校に継続的な対応を求め続けることができます。
5.まとめ:お子さんの未来を守るために。まずは専門家へご相談を
いじめは、お子さんの教育を受ける権利を侵害し、放置すれば不登校や深刻な精神的ダメージにつながる許されない行為です。学校や教育委員会との信頼関係が築けない状況でも、弁護士は法律の専門知識を駆使してお子さんの尊厳と安全を守ります。一人で抱え込まず、早期に専門家へご相談ください。
【ご相談のお申し込みについて】
牧野太郎経営法律事務所では、学校でのトラブル、いじめ問題に関するご相談を承っています。
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